「おい憂巳、」
「出てくんなハゲ。…ここは俺の役目なんだよ」
うっ、うっ。
視界がもっともっとぼやけて歪んでいくなか、見せ物となった私からはこんな音が出ていたらしい。
「ちょうどいい機会だし、逆に助かるよ。───こいつは雲雀会が預かってる人質。借金だらけの母親の身代わりとして拉致ったんだ、俺が」
「うん…っ」
驚くことではない。
たとえ少女ひとりを拉致したところで、この世界にとっては当たり前。
「母親はクズ中のクズで、父親は天鬼に殺されてる」
「なに…!?天鬼だと…!?」
「うんっ」
うん、うん。
聞こえてないくせに食いぎみに反応して、私はいったい何がしたいんだろう。
「いーよ別に。天鬼って聞いてビビったんなら、ここから逃げてくれても」
「うんっ」
「…ニコちゃん。ちょっと黙ってよっか?」
「うっ、うん……っ」
「って言葉すら聞こえないんだよ、こいつって」
すぐ目の前にゆうみは立っていた。
溢れては止まらない涙を一生懸命拭っている私には、あなたがどんな顔をしているかなんて分からない。



