「ハッキリと言いませんでしたが、私に“同情するな”と申したのはあなたです。…私たちは極道の人間なんですよ」
「知ってるよそんなこと。もちろんいたぶって身を削らせてまで、それくらい働かせるからこいつには」
「………には、見えませんがね」
だけじゃない木の匂いまでも。
葉っぱの匂いだって。
すごくあったかい匂いがした。
「……へえ。難聴って後天性なものもあるらしーよ。こいつ、どっちだろ」
「補聴器は……付けられていません。特別な何かをされているわけでもないようで」
「ふーん。…残念だねお嬢さん。しばらくカタギには戻れないだろうけど、頑張って」
そこで、わたしの世界はゆっくりと開く。
夢のなかでは可愛いキャラクターたちがみんなで角っこを探していて、わたしも一緒になって追いかけていた。
「おはよう。ひとのベッド占領した寝心地はどう?」
「……………」
「…ほら矢野、頼んでおいたやつ」



