バックミラーから見えるジローの顔と、隣に座るゆうみの表情が一致しない。
私の肩に自然と手をまわして、それだけで気分はいいみたい。
こっちの緊張なんか知りもしないんだから……。
メイクも衣装も、いろんな意味で今日は落ち着かない日になりそうだ。
「ゆうみ、…ちかい」
「ん?」
「…ちかいよ」
いちいち14歳の頃と比べたくはないけれど、当時はあなたがシートに足を組みながらどっかり座って。
私は常に恐怖と戦いながら端に寄るように小さく座っていた。
そんな私にかどっこまいにち、見せてくれたんだよねいつも。
「言っただろ?俺かなりメンヘラだよって」
「…シートベルト、して」
「なんだったらキスマのひとつくらい見えるトコに付けときたいんだけど。そんなことしたらたぶん、おまえ泣いちゃうだろーからね。俺だって我慢してるんだよ」
「あぶない…、ゆうみ」
「せめて俺の匂いつけとこうと思って。いつもより香水、大量につけちゃったー」
成り立ってないのはもう重々承知。
私とゆうみの会話はときどき、こんなもの。



