「…冗談に決まってるだろ。おまえ、なんでいつも肯定したらダメな場所で迷いなく”うん”とか言ってくんの」
「うん……っ」
「だっからさ……、言っとくけど、俺ニコちゃんが思ってる以上にかなりメンヘラだからね」
腕のなかの心地良さに、もう少しだけ甘えていたかった。
このときの私は。
「まだ…っ」
「…なに?」
「…はなしちゃ、……や…」
通じていないはずの、言葉。
交わせていないはずの、会話。
しかし心は、たぶん、知られている。
「────なら1回、俺に抱かれとく?」
「うん…っ」
「………おまえさあ…、それ海人にも同じように言ってたら冗談抜きで犯すよ」
「…ゆうみ…、ねつ……」
「……そっちなんかとっくに冷めたんだけど。にしてもほんっと……とんだ女拾ったな」
どうして聞けなかったの。
どうしてあなたは、私は、“聞こえない”ことに納得してしまったの。
どんな表情をしていたかって、それくらいは“見れた”でしょう。
見ることしかできない私なのだから。
子供だね。
ああもう、情けないくらい子供。
数年後の私はね、
あなたが居なくなった未来の私はね、
あなたが消えた未来を生きる私は、ね。
後悔ばかりだよ───憂巳。



