「ゆうみが…いい」
「……………」
「ゆうみがいれば……いいっ」
あなたがいれば、いい。
家族が誰ひとりいなくても、そこにあなたさえいれば私はきっと笑って生きられるんだと思う。
「…じゃーもう、俺が貰ってあげるよ」
吐息が感じ取れるから、ゆうみは私に何かを言っている。
せめて読み取りたいと身体を離そうとしても、こういうときに限ってなぜか逆に引き寄せられてしまうんだ。
「あと1年だってさ、ニコが結婚できるようになんの。…たったの1年。ほんと早すぎ。俺のなかのおまえって、まだお下がりのパーカー着てべっこう飴作ってるガキんちょなんだよ」
いつか、なにかの奇跡で耳が聞こえるようになったとしたなら。
いちばん最初は、あなたの声を聞いてみたい。
「…でもさ、俺にはニコちゃんしか居ないような気もすんだよね。んで、たぶんニコにも俺しかいないよ。…どう?俺に養われてみる?」
「………うん」
「……は…?」
離れろ、うざい、きらいだ。
もしそう言われていたとしても私は「うん」と、とりあえずは言っていた。
だからって適当に言ったわけじゃない。
会話が成り立っているフリがしたくて、したわけでもない。



