────ぜんぶ聞こえていなくて、良かったと。
「俺の権力使ったとしてもさすがにそっちの世界には行けないや。…行かせることはできてもね」
ごめん。
本当にごめん───、
どうして謝っているの、ゆうみ。
「俺たちがあの組を潰せるなんて誰も思ってないしたぶん…誰ひとり望んでもないんだろーけど。もし俺が天鬼を潰すって言ったら……ねえ、ニコだけは応援してくれる?」
この顔は、闇を知っている顔。
最初の頃は近づこうにも近づけなくて、気づいたときにはあなたは私に背中を向けていた。
だんだん弱さと一緒に見せてくれるようになって、今では。
私のために───なんて気持ちが、見える。
「勝算はもちろん無いに等しいけどね。としても重要人物くらいはヨユーで消せるんだよ、俺って」
「っ……!」
「なんだったらそいつらの周りにいる光を消したっていい。おまえの父親を殺しといて自分の家族に手はかけさせないだなんてのは虫が良すぎる話だ。…さあニコちゃん。どこでこいつと知り合った?」
どうしてそれを。
いつの間に、私のバッグでも漁ったの。



