《こわい夢でも見た?》
今度は暗がりのなかで最低限に明るさを落としたスマートフォンだった。
文字にして聞かれた言葉に、わたしはうなずく。
「どんなゆめ?」
これは口の形から読み取ることができる。
きっと聞いてくるだろうと分かっていたのと、14年間音のない世界を生きてきたなかで染み付いたものだ。
「…俺にくらい言ってくれてもよくない?」
物音に気づけないから、わたしはずっと寝てしまってて。
目が覚めたとき、みんながいなくなっている夢。
お父さんもそうだった。
お母さんも、そうだった。
つぎは誰かなって考えてしまうことが、苦しい。
「はあ…。珍しく頑な。俺そんなふうに育ててる覚えないけど」



