「ふふ、カイマくん。あんなに今日は演奏しないって断言してたのに」
「…だって身体が勝手に動いたから。テンチョー、俺もう帰っていい?今日の分は働いたよね。ノノちゃんもいっしょに帰ろーよ」
「おまえの出勤時間な、まだ5分くらいだぞ」
誰よりも青年の演奏を幸せそうに見守っていたのは、働いているスタッフさんたち。
店名の意味が分かったような気がする。
(なんか、いいなあ…)
みんな顔も違うし、名札にある名前も違うけれど、家族という感じがしたんだ。
カウンターに飾ってある彼らが並んだ家族写真は、このお店ではない場所で撮られたものだろうか。
「……ん?ハンカチ?」
良いものが見れたと、それはお店を出たとき。
ドアの外に落ちていた1枚のハンカチ。
最初に気づいたのは海人だったけれど、しゃがんで拾ったのは私。



