「………おお、助かった助かった」
「……パパ。あのお兄ちゃん、わたしより上手だよ?」
「それはないね。俺の娘のほうが上手に決まってんでしょーよ」
奏でられた音は一切と聞こえない。
聞こえないけれど素晴らしい演奏だと、私も本心から言えそうだった。
ピアノに座って鍵盤を叩く彼もまた、私とさほど変わらない年頃だろう。
よく見るとここはピアノバーでもあるらしく、無定期で演奏がされるとのこと。
「リクエストはありますか?」
「ええっと、そうねー、んじゃあ子供が笑顔になるものを」
「…ふっ。わかりました」
心が踊るようなステップに変わった。
まるで小さな小人たちがピアノの上をスキップしているような、そんな指の動き。
演奏が終わると女の子は笑顔になっていて、お父さんに抱っこされている。
私と海人は無意識にも拍手を響かせた。



