そしてここで、わたしは焦り出す。
「ぅ…っ、……ぁぁーーーっ」
のどが痛くなるから、あまり言語を出したくない。
でも音がないと周りには気づいてもらえなくて、助けを呼ぶことだってできないから。
「ぅぅ…っ、か、ぇう…!」
かえる、帰りたい。
今までだって朝まで帰ってこない日はあったから、今日もきっとそんな日なの。
もうしばらくすればお母さんはぜったい帰ってきてくれるんだ。
「…カシラ、」
「いいから気にせず出せ。ここに情なんか持ってどーする」
「…わかりました」
暴れても暴れても、わたしの動きを先回りして予測しているかのごとく掴まれる。
そして彼は何食わぬ顔でスマートフォンを操作しながらも。
「ツラいだろーけど、もうきみのお母さんは帰ってこないんだよ。あーうるさいうるさい」
発車する車にとうとう、わたしが拙(つたな)い声を上げてまで泣き出したときだった。
スッと小さな画面が差し出されたところに、見たこともないカラフルなキャラクターたち。



