どうしてそんなにもふたりして驚きながら見てくるのか分からない。
照れることなく平然とした顔で目を合わせているわたしに、彼が動いた。
「…とりあえず、」
近づいて、身体に腕が回ったと思えば。
ふわりと担ぎ上げられている。
「行くよ矢野」
「…その抱え方はどうにかなりませんか。俵ではないんですから」
「だって俺たちヤクザだろ?おまえだって情報吐かせるためなら平気で指くらい折るくせに、障害持ちって知った途端まったくだ」
「……………」
「それに、これがいちばん効率いい運び方なんだよ。暴れた場合は容赦なく放り投げられる」
ドアに鍵をかけることもなく、古びた団地の階段を降りていく。
外に停まっていた車体の低い後部座席、なにも分からないままに運ばれて入れられてしまった。



