スッと伸びてきた手が、私の頭に触れるギリギリで落ちた。
ショートヘアからミディアムヘアになったとしても、彼はくるくると遊ぶようにも触ってこなくなった。
16歳と22歳。
どうしていつになっても追いつけないんだろう。
「じゃあ俺もう時間ないから行くけど。海人もそこまで長居するなよ、迷惑だから」
「へーい」
「…あ、…行って、らっしゃい」
「…ん。行ってくる」
空気感で分かるようになった。
ゆうみはこの屋敷に“帰ってきた”のではなく、時間が空いたから“立ち寄った”だけ。
そしてまた夜の街に消えていく。
あまり人をいたぶりすぎちゃダメだよ、話で解決できるならなるべくそうしてね。
心のなかで伝えて、私は彼の背中が見えなくなるまで今日も見送るのだ。
────と、振り返った。



