「……なぜ、そんなにも楽しそうな顔をしていらっしゃるのですか。…憂巳坊っちゃん」
「…兄貴にもできなかったことが俺にできるかもしれない。ゾクゾクするだろ、そんなの」
大口を開けて笑いたい気分だ。
天鬼に歯向かったという歴史だけでも作れたなら、きっと俺は兄貴を超せる。
いまだに集中治療室で眠ったままらしいあの男に、これほどない手土産ができるなんてさ。
「無謀です。いまの雲雀会の力では、天鬼組には敵いません」
「べつに向こうを潰そうなんて微塵も考えてないね」
「え…?」
呆気に取られた世話役の顔。
今ではおまえのそんな顔も見れるようになったよ、俺─ぼく─。
「俺はただ、ニコの父親を見つけ出して1発殴りたいだけ。…殺しはしない程度に」
でも俺はやっぱり落ちこぼれの出来損ないだから。
あの子を父親に会わせてやることも、結局は叶わない夢となるわけで。
ニコの父親は。
音都ちゃんのお父さんは。
このときすでに天鬼に殺されてたとか────知るかよ。



