「…カシラ。彼女は本当に耳のほうが、」
「んじゃあ見てな。このバーーカ、チービ、ガキんちょーー?……ほらね、まったく反応しない」
「……そのやり方はいかがなものかと」
目の前でそんな会話があることにさえ。
お母さんを怒らせちゃったのかな…。
わたしが良い子にしていなかったから、嫌いになったんだ。
【きのうの夜、朝はいなかったよ】
わたしが見せるより前に、書き終わった瞬間に奪われた手帳。
「……カシラの予想は大当たりなようで。代わりに娘を俺たちに売ったというわけですね」
「ははっ、俺たちナメられすぎ」
そしていい匂いがするお兄さんは、立ち上がって部屋をぐるりと見渡す。
「ってことは、こいつを連れてくしかないや」
「…連れていきますか?この子を働かせるということに…なりますが」
「その通りだけど?なんか問題でもあんの?」
「………いえ」
ぎゅるるるるーーーー。
そのとき、わたしのお腹が凹んだ。



