「ねえオバサ…、サイオンジさん」
「へっ、な、なによ…!」
「かどっこまいにち、知ってる?」
「かどっこまいにち…?」
「あー知らないか。じゃあダメ、さよーなら」
ゆーみ、あのね。
ボタンのほつれ糸とペットボトルのフタは相性がいいんだよ。
ペットボトルのフタはいつも好き勝手に歩き出しちゃうから、ボタンのほつれ糸を巻き付けておけば迷子にならなくて済むんだって。
かどっこまいにちの裏設定に載っていたの。
「あんたは礼儀作法は身についてんだからさ。年相応な格好してそのぬいぐるみに向ける優しさを誰かに注げさえすればたぶん、王子様は簡単に見つかるでしょ」
「っ、」
「…そんでニコちゃんはさっさと服、着ろよ。ここが野郎しか居ない場所だって分かってんの?」
それからキララさんはいつの間にか屋敷からいなくなっていて、どうやらゆーみのお父さんは一部始終を陰から見ていたらしく。
「言って俺まだ21だし。せめてあと…3年くらいは自由にしたいよおとーさん」
ニッと笑った息子に納得したのか、なにも言うことはしなかった。



