でも、今は。
確実にわたしの弱さを包み込んでくれる、広い広い光のようなものを感じる。
「…だからニコちゃん、賭けてみな」
見えなくとも、やさしい顔だってこと。
そこまでやさしく撫でなくてもわたしは消えないよ、ゆーみ。
「俺もギャンブルとかそこまで興味ないけど、もしニコが結婚したら俺の勝ち。生涯独身を貫いたらニコの勝ち。負けたほうは一生、勝ったほうの隣にいて……そいつの最期を看取ること」
このときのわたしは、知らない。
それはどちらにせよ、どちらが勝ったにせよ負けたにせよ、「俺たちが離れることはない」と言われていることを。
「俺もおまえにならぜんぶ…いつか見せるよ」
「っ…!」
おでこに、ひとつ。
彼がするには優しすぎる何かが、確かに落ちてきた。
もし音が聞こえていたら、それはどんな音だったかな。
「言っとくけどこれは同情でもなければ、ガキだと思ってる奴になんかしないことだからね」
大事なところで、知りたいところで手話を使わないのは、この人の照れ隠しなのかもしれない。



