“ぜったいに結婚できないのは、わたしだよ”
「…………」
結婚なんてわたしにとっては夢のまた夢、ずっとずっと先すぎる話だ。
借金だらけのこんな女が夢見てはいけないものだとも思うし、障害を持ったわたしを好いてくれる人なんか、きっといない。
考えることすら、相手に迷惑をかけてしまう。
「…幸せを掴むことに音は大して必須じゃない」
どうしてそんな顔で見下ろしてくるんだろう。
「って、俺いつかに言っただろ。……音都ちゃん」
わたしたちは正反対のようで、きっと同じものを抱えている。
普通にはなれない、ごく世間を生きれない柵(しがらみ)に縛られながら、暗闇のなかにある光をせめて大切に守っているような。
そしてこの出会い─光─が、いつか消えてしまうことを常に恐れているんだ。



