「結局おまえも、ずっとここに居てくれるわけじゃないしね」
どうして寂しそうな言葉だけが、わたしの耳には聞こえてくるんだろう。
いい意味でも悪い意味でも、なんにも聞こえなかったのがわたしだったというのに。
ゆーみの本心だけは耳じゃなく心に聞こえてくるんだ。
「はい、る」
服に手をかけて、自らバサッと脱いでしまえば。
ほんの少し目を開いた彼が「なにしてんの」と、訴えかけてきた。
キャミソール姿のわたしが、洗面台の鏡に映し出される。
“ニコ、やめろ”
そんなにも簡単な言葉に手話を使うくらいなら、今までの会話にも使って欲しかった。
焦ったように強めに肩を叩いてまでわたしに言ってくる。
“ゆーみには、本当に好きになった人と結婚して欲しい”
“…いいんだよ俺なんか。だって俺みたいな男を好きになる女なんか、絶対いないじゃん”
“いる”
────ここに、いる。
好き、という気持ちはまだイマイチよく分からない。
それでもわたしの人生をすくってくれたあなたが大好きな気持ちは絶対だ。



