『聞こえてないのは嘘だったりしない?だとしたらかなりの策士だ、ここで生きる素質あるよ』
『……………』
『……覚えときな。幸せを掴むことに音なんか大して必須じゃないって』
なんでこんなこと言ってんだろ、俺。
俺たちの仕事を増やしてくれた女の子供なんだから、雑に扱ってもいい存在だってのに。
男ばかりの場所にそいつを連れ込んで、使用人にさせた。
ただすでにヤクザな俺を知っている少女との生活はとてもラクで、意外とあったかくて楽しくて驚いたんだよ。
「カシラ…、あの、聞いても殴らないで欲しいんスけど…」
「なに?」
「当てていいっスか…?」
「だから何をだよ」
「いまカシラが考えてる存在の名前っス。たぶんそいつのおかげでカシラは過去を思い出にできてるんス」
「…だれのおかげ?」
わかってるよ、もう。
手間も世話もかかるけど、妹だとは思っていない不思議な存在。
「ニ───ふがァ…っ!!ひっ、ひどいっス殴らないって言ったじゃないっスかぁぁぁ……!」
「埃、ついてた」
「そのドS加減どうにかしないとお友達できないっスよ…!?」
「なに?次はみぞおち?」
「どんな変換っスか!!!」
まるでそれは、悪夢のなかにある、光。



