スラリと伸びた手足、ゆるりと伸び上がった唇。
反対に目尻はどうしてか下がって、それはわずかに緊張をほぐしてくれる顔だった。
「矢野、メモかなんかある?」
「メモ、ですか…?こちらでよろしいでしょうか」
「なんでもいーけど、ペンも」
「はい」
なにを書いているんだろう。
スラスラと動かされるペンと、影を落とすまつ毛、やっぱり綺麗な銀色を追いかける。
目の前に新しいものがあると、つい今のように追いかけてしまう昔からの癖。
【俺たちは君のお母さんだけに用があって来た。怖がらなくてへーき】
このひとに言われたから緊張が緩和されたんだ。
もし違う人だったなら、そう言われたとしても泣いてしまっていた。
わたしが読んで、理解して、うなずいてをしっかり確認してから、またペンを動かす彼。



