『いい顔つきになったじゃねェか、憂巳』
『残念だねハゲ。あんたが育て上げたこの組織、“俺”なんかに奪い取られて』
『…その覚悟、曲げんじゃねェぞ』
17歳、雲雀会の若頭になった。
本当は俺より相応しい男がいたが、やむを得ない事情の末、俺に譲り渡された。
『カシラ、喧嘩は程々に』
『喧嘩じゃないって言ってるだろ。これは俺なりの商談さ。力でねじ伏せんのがヤクザだって俺の見解、間違ってる?』
『…戦闘狂と異名が付いていますよ』
『へー。もっと暴れやすくなって最高』
変わったんだ。
僕は、俺は、変わった。
雲雀会の顔として生きることを覚え、強さだけじゃない威厳や尊厳、残酷さを身につけた。
これでいいんだろ………なあ。
『……そっか。聞こえてないんだ、こいつ』
そうして20歳になった俺の前に、ある日、耳が聞こえない少女が現れる。
最初はただの興味本位で、同情。
親に捨てられてヤクザに売られた上に耳も聞こえないとか、可哀想だと思った。
まだガキんちょだし、これからこいつはどうなるんだろって。
でも、それだけじゃない。
それだけじゃない何かがその子にはあったんだと、俺は少し先で知るわけだ。



