「あんなにも大切にしてましたもんね…、彼女のこと」
「…はっ、笑わせるなよ」
「どうしてっスか…?」
「家柄も名前も身分もぜんぶ嘘。そんな関係が大切にしてたって?もっと恋愛ドラマでも見たほうがいいよタクロー」
「……せめて数字にしてくださいっス」
別に未練があるわけじゃないけど、“見たくなかった”とは思った。
過去の恋愛、所詮はガキ同士の恋愛、引きずるほうが時間の無駄。
そう思ってたけど、実際に見てしまうと───そりゃいろいろ考えちゃうよなってのが本音。
「ママ~!みてみて!」
「わあ、綺麗な石だね」
「キラキラしてるの!」
「持って帰ろうか。あれ?パパは?」
「パパー!こっちーー!」
そんな声だったっけって、よく分からなくなった。
もっと大人しそうで控えめな声じゃなかったかと、俺はふと立ち止まってまで思い返したりして。
………そっか止まってんのは俺だけってことか。
小さな男の子を連れた女は、引き返す手前で俺に気づいた。



