難聴の程度には軽度なものから重度なものまで様々と言われているが、わたしは重度に値する。
補聴器も効果はないと言われ、発見も遅かったためにわたしの場合は人工内耳を埋め込むこともできなかったのだ。
「退けよ矢野」
すると、そのうしろ。
わたしを見下ろしながら何かを言いつづけていた男を肩からぐいっと引っ張るように退かしたのは、まっしろな人。
でもヒーローという感じはしなくて、どちらかと言えばイタズラな悪役。
かつて通っていた学校で、こっちのほうが好きと言っていた女の子が指をさしていたようなダークヒーロー。
「カシラ、なにを」
「……そっか。聞こえてないんだ、こいつ」
「え…?」
緊張を感じているわたしは握った手に汗をかいていると、彼は目線を合わせるようにしゃがんできた。
髪は銀色、目は色素の薄い茶色。
肌は白くて、スーツは真っ黒。
ぜんぶが違う色だというのに、なぜか統一感がある。



