「あっ…、かいと」
「んあ?」
つい呼び止めてしまったわたしは、これは今じゃなくてもいいかと考えなおす。
本当はこの勉強が終わったら聞くつもりで、わたしとしては本題だったとしても。
────中学校って、楽しい?
………いっか、また今度で。
「なんだよ?……あーもう!」
電子パッドは今や海人とのコミュニケーションのためにあるようなものだ。
海人なりに簡単な手話から身につけてくれてはいるけれど、ちゃんとした会話はやっぱり文字に頼ってしまう。
呼び止めておいて「なんでもない」を繰り返すわたしに我慢ならなかったのか、それは今まででいちばん読みづらい字だった。
【言いたいことあんなら言えって!】
「……ない」
【おまえのそーいうとこな、ほんっとブスだからな!!バーーカ!!!】
「………ひど、い…」
可愛くないことは分かっているけど、そんなに堂々と毎回言われると傷つく。
初めて会ったあの日も、じつは海人はわたしを指さしてそう言っていたらしいのだ。
ただ、あのときより背が高くなっていたり。
あのときより体つきも男の子になっていたり。



