『ぼくは誰にも必要とされてないの…?お父さんも兄ちゃんの名前ばっかり呼んで、お母さんはずっといないし、屋敷にいるみんなだって……』
『…あなたもカシラの息子、そして羽倉家の人間です。いつか雲雀会を背負っていかなくては』
『ぼく喧嘩なんか嫌だよ。みんな仲良くしてほしいもん…。ねえ矢野、矢野はずっとぼくの味方でいてくれる?』
この世界に染まらなければ、この子の居場所はない。
組員たちに認められるような男に、誰しもに恐れを与えられるような男に育て上げなければ。
世話役を任されていた男の使命は、少年の生まれ持った優しさを消すこと。
『絶対に裏切らない仲間を作りたいならば……憂巳坊っちゃんがお兄様に負けないくらい強い男になることです』
『…むりだよ。ぼくなんかが兄ちゃんに勝てっこないし…』
『だとしても、です。あなたはそれくらいの意思がなければいけません』
変える必要があった。
変えさせる必要があった。
ここは世間から外れた裏の世界。
生きてゆくためには、どうにかしてでも俗世間のはぐれ者にと。



