むかしむかし、とある歳の離れた兄弟がいました。
ふたりの兄弟は少し特別な家系に生まれ、小さな頃から俗世間とは少々離れた暮らしをしてきました。
兄は幼い頃から文武両道で冷静沈着。
あたまに血が昇りやすい男たちをまとめ上げるにはもってこいの存在。
仲間たちから大いに期待を受ける長男が彼でした。
いずれこの組織を継ぐのは兄だろうと、誰もが口を揃えて言っていました。
対する弟といえば………
『また泣いていらっしゃるのですか、憂巳坊っちゃん』
『やのっ!ぼくはどうしてお友達ができないの…?ただみんなといっしょに遊びたいだけなのに……』
『…仕返しましたか?』
『どうして仕返しなんかするの…?ぼくそんなこと絶対にしないよ!!』
冷静以上の残酷さを身に付けている兄とは正反対の、弟は心優しい男の子。
まるでそれは兄が持っていないものを弟が補っているようにも見えて、逆もまた然(しか)り。



