だいじょーぶだよ。
わたしの悪いところは耳が聞こえないこと。
良いところも、耳が聞こえないこと。
なにを言われたって、どんなにひどいことを言われていたって、平気な顔で聞くふりをすることができる。
「………俺をすくってよ、ニコ」
「うん」
「っ!…うんって、さ」
助けて助けて、
頼むから俺を救ってくれ。
────わたしには、こんなふうに聞こえてきた。
「知らないだろーから教えてあげる。俺は極道のアタマ。ナメた口ばっか利いてると……こんなことも簡単にできるんだよクソガキ」
「っ…!」
伸びてきた手はわたしの首を掴んだ。
絞め付けるように力を加えられると、当たり前だけど息ができなくなる。
この人は本気でわたしを殺す気だ。
海のほうが冷たいと思わせてくる体温で呼吸を止めてくる彼は、偽りなくそう思わせてきた。
「ゆー……、きれ…」
「…は……?」
「きれ……、ょ」



