「俺なんか所詮は組にとってもあいつの代わり。っても、代わりにすらなれないただの落ちこぼれだ。消えるべきは……俺だったんだよ」
消えそう。
そう思ったから、わたしは黒いスーツの袖を掴んだ。
「なあ…ニコちゃん。いつか俺といっしょに死ねよ」
手話を使ってくれないのは、きっとわざと。
「ゆー、み」
「…なに?」
「わた、し……いる」
「……………」
「ここ……ぃる、よ?」
泣かないで。
そんなに泣きそうな顔、しないで。
あなたに救われた女の子はここにいるよ。
あなたと出会って初めての世界ばかり味わって、夢みたいな光に触れた女の子は。
ここに、いるんだよ。
「じゃあ……ぜったい俺を捨てないって約束、できる?」
「…ん」
「…なにがあっても?どんな姿を見ても?俺が世間にとって悪でしかなかったとしても?組織のためならニコちゃんを平気で利用して差し出すのが俺だってのに?」



