この場所は変だ。
だって聞こえないはずの賑やかな音がいっぱい聞こえてくるから。
「どうだニコちゃん。運転うまいっしょ俺」
走り抜ける、夕暮れ空。
大きな橋にわたしの視線は釘付け。
「どっかコンビニ寄っておにぎりでも買う?おまえ今日なんも食べてないだろーし」
「…………」
「ちなみに俺おにぎりは明太子一択。…そろそろ海沿い走るよ、ニコ」
でも、本当は。
あなたはいつも話しつづけてくれるから。
聞き取ることも、返事さえできないわたしにしつこいほど。
窓に反射して映ったゆーみの運転する姿を、わたしは忘れないようにずっと見つめていた。
「…おまえを俺たちのとこに連れてきたのはさ。面白そうだったから」
「……………」
「面白くなるんじゃないかって思ったから。…俺の退屈すぎる人生が」
「……………」
「でも同情もあった。耳は聞こえない、親にも捨てられる。こいつ可哀想だなってほんと笑えたよ」
「…ゆーみ」



