くしゃりと撫でられてから、優しくとかすように包み込まれる。
しばらくわたしを甘えさせてくれていた。
「どうしよ。ねえ、可愛いんだけどこいつ」
まさかそんなことを彼がつぶやいていたなんて。
どんな顔をして、どんな音色で、どんな仕草で。
「名前つけると愛着湧くって言うけど……やられたかも」
すべて見ていたらしいジローは「尊死……」と言いながらなんとその場に卒倒したそうな。
「カシラ、やはりここに居ましたか」
少し経つと新たに現れたのは、珍しく肩を揺らせた矢野さんだ。
「悪いけど矢野、会食にも俺は不参加って伝えといて。組にとっては世話になったかもしんないけど、
だいたい縁もゆかりもないジーさんの葬式なんかに行って何を感じればいいんだよ」
「組長はあなたを幹部に降格させると言っています」
「上等。どうせ今は俺しか跡取りいないんだから、そんなことして自爆すんの自分だろ?これ以上焼け野原にして食らうのも自分だってのにさあ。
さすがに育毛剤じゃ無理なレベルにまで来てんの、そろそろ気づけよあのハゲ」
「……………」
「それより俺の置き手紙を間違えて捨てた舎弟は今すぐクビにしろ」
「…………それは私です。申し訳ございませんでした」
「グッバイ矢野。今までありがとうくたばっちまえ」



