「待ってくださいってカシラ…!ヤバいっスよ、大事な葬儀を飛び出すって…!」
「雲雀会じゃないからセーフ」
「いやいやオレたちの親組織なんスよ…!?ああ…、今ごろ組長は身体中の穴という穴から火ぃ吹いてるっス……」
「まあ毛がないぶん短気だしね、あのハゲは。ただニコが泣いてる声が聞こえた気が───」
突っ伏すように泣いていたときだった。
伝わる振動に気づけなかったのは、それくらい声を上げて泣いていたから。
「…ほーらビンゴ」
いつもと同じようで少し違うスーツ姿に、どこかお線香の匂いが漂っている。
持ち上げられるように触れられてから顔を上げれば、ぐしゃぐしゃな視界のなかでやさしく笑うゆーみがいた。
「葬式だから夕方まで帰らないよって置き手紙、ここ出る前に間違えて誰かが捨てちゃったらしくてさ。どーせ冷蔵庫にあるご飯も食べてないんだろ?」
いつからこうして抱き上げてくれるようになったんだろう。
それまでは俵を抱えるみたいな雑とも言える担ぎ方だったというのに、今はしっかり身体が支えられて目が合う。



