「ぅ、ぁぁぁぁぁーーー……っ」
どうしてどうしてどうして、どうして。
どうしてみんな何も言わずにわたしのことを置いていくの。
聞こえないから面倒なの…?
聞こえないからいいと思ってる……?
わたしだってずっとずっと、寂しかった。
(いま……、何時…?)
それからわたしは泣き疲れて眠ってしまったみたいで、目覚めたときにも状況は変わっていなかった。
夢のなかでも泣いていたのか、畳に流れた涙の跡は乾いていない。
ふらふらとおぼつかない足取りが目指した場所は、ひとつの襖の前。
“この部屋にだけは何があっても入らないように”
と、ずっと言われていた部屋。
舎弟ですら禁止されているらしい一間は一体なにが隠されているのだろう。
(なんだ…、普通のお部屋だった)
たぶんバチが当たる。
きっと怒られて、嫌われる。
そう思いながらも両手で開けた襖の先は、おかしなこともない誰かの部屋だった。
整頓されたベッド、片付いた机、揃えられた本棚。
不思議だったのは生活感がなく、普段から使っていると思わせるぬくもりもない。
まるでこの部屋だけ時間が止まってしまっているみたいだ。



