床が動く。
数人の足音が叩いてくれる振動だけが、わたしへと知らせてくれる合図。
音のないまっしろな世界は、いつもいつもひとりぼっちで怖かった。
「だからって俺、必要なの?」
「カシラは圧力と抑止力にもなるんです。それに、たまには仕事をしてもらえませんか」
「してるさ。昨日も例のトコ、ひとりで取り締まってやっただろ」
「…あれは取り締まりではなく、喧嘩と言います。あなたは独裁的すぎるんですよ。迷わず武力行使、残った雑務を片付けるこちらの身にもなっていただきたい」
「嫌な言い方すんねおまえ。俺は可愛い子分たちに易しい仕事だけを与えてあげてるってのに」
「邪魔を入らせず好きにやりたい、の間違いではないですか」
押し入れを少し、ズラしてみる。
ほんのわずかな隙間から目を覗かせた。
「んー…、団地住みのくせ私物はブランド物ばっか。ここで間違いないはずだけど、完全に飛んだんじゃない?その女」
「まじスか…!?ちょっとオレっ、まだ外をうろついてるかもなんで探して来るっス!!」



