「んじゃぁ、自転車と傘、借りて行くよ」 「ああ、気を付けて行くんだよ!」 心配げにいつまでも手を振っている二人に、借りたじーちゃんの黒いこうもり傘を持つ手を軽く振って、別れを告げた。 古びた赤いママチャリに、黒いこうもり傘。 なかなか素敵な出で立ちだが、気にしてる場合じゃない。急がないと、真面目に電車に乗り遅れてしまう。 乗り遅れたら、次は一時間後。 JRの乗り換え時間にも、全部間に合わなくなってしまう。 俺は、無人駅に続く田んぼの中の真っ直ぐな砂利道を、軽快に飛ばしていた。