ケーン――! 甲高い獣の鳴き声が、何処までも続く田園の中に木霊する。 振り返る俺の目に映ったのは、緑の稲穂の中に、ぽーんとトンボを切る白い獣の姿。 白いふさふさとした大きな尻尾が、ふわりと宙に舞う。 細く長く伸びた鼻筋。 「白い、狐――?」 ちりん。 と俺の足下で鈴が鳴った。 左のつま先に落ちている、小さな古い銀の鈴。 それを手に取り、くるくると回す。 「あ――!」