depot~停車駅~(短編)


俺は右手に持った、残りのいなり寿司を口に放り込み、携帯の着信表示を確認する。じーちゃん家からだった。


「あ、ちょっとゴメン」


彼女に断って、駅舎の入り口に歩きながら電話に出る。――何か、忘れ物でもしたかな?


「はい。もし、もしー」


「あんた、生きてるのっ!?」


むぐむぐと、必死にいなり寿司を飲み込む俺の耳に、大音量のばーちゃんの声が響き渡った。


あまりのその迫力に、思わずご飯が鼻に逆流して、ぐほっとむせてしまう。


「な、何だよいきなり!? ビックリしたなぁ」


涙目になりながら答える俺に、更にボリュームアップした声が追い打ちを掛ける。