「ああ。雨、止んだんですね。変な雨でしたね。雨雲なんて無いのに降るなんて……」 「狐の嫁入りって言うんですよ。ああ言うお天気雨のこと」 「へぇ。そうなんですか」 その時、ぐう、と彼女のお腹が鳴った。 「ご、ごめんなさい!」 見る間に、白い顔を真っ赤に染めて彼女がうつむく。 笑っちゃいけない。 出物腫れ物所嫌わず、自然現象だ。 俺は、微笑み以上に顔を崩さないように苦心しながら、ばーちゃんの『お稲荷さん』の入ったタッパーを、デイ・バッグから取り出して彼女に勧めた。