「あの、ここら辺の人じゃないですよね?」
何か話題を振らねばと、当たり障りの無い話を振ってみる。
ご多分に漏れず、この辺も大分過疎化が進み、同じ地区の同じ年頃の人間は、さほど多くはない。
彼女の顔には見覚えが無かった。
それとも、俺と同じで、親戚の家に遊びに来ているのだろうか?
「私は、山向こうに住んでるんです」
「山向こうっていうと、峰岸神社のあたり?」
「ええ」
「へえ。あそこの神社のお祭り、毎年行くんですよ。今年も行って来ました。もしかしたらすれ違っているかも知れないですね」
「ええ」
ニコニコと相づちを打つ彼女を見ていたら、何故か夢に出てきた白い子犬を思い出した。



