五秒ほどの茫然自失の後、俺はスウッと大きく深呼吸すると、最後の力を振り絞り、ママチャリを引いて猛ダッシュした。 がたがたと暴れるハンドルを握り締め、駅に向かいひたすら走る。 はあはあと息が上がる。 雨と汗で体に張り付いたTシャツが煩わしかった。 無情にも、後二十メートル! と言う所で再び警笛を鳴らしながらゆっくりと、電車が動き出す。 俺はぜいぜいと大きく息を付きながら、定時で発車して行く電車を恨めしげに見送った。