depot~停車駅~(短編)


俺は、がたがたと、もの凄い振動をする暴れ馬のようなママチャリを、一心不乱にこいだ。


遠くの田んぼの真ん中にポツリと建った、無人駅の青いトタンの外壁が視界に入る。


プオーン――! 


ローカル線の二両編成の赤い電車が、警笛を鳴らしながらゆっくりと駅に入って来るのが見えた。


やった! ぎりぎり間に合う!!


そう思った瞬間、がちゃりと言う嫌~な音と共に、ママチャリがスーっと止まった。


「……やっぱり、今日は厄日だ。そうに違いない」


ママチャリのチェーンが、何故かブッツリと切れていた。


外れたんじゃない。見事に切れていたのだ。