エルウィンは激しい怒りを内に秘めたまま、階下に降りた。
するとホールには怪我を負い、ロープで縛り上げられた褐色肌の敵兵が大勢座らされていた。
そして彼らを監視するようにアイゼンシュタットの騎士達が見張っている。
『お待ちしておりました!』
騎士団長たちはエルウィンに敬礼した。
「随分人数が多いな? 初めにこの宿場村にいた人数より増えていないか?」
腕組みをし、敵兵を見下ろしながらエルウィンは傍らに立っていた騎士に尋ねた。
「はい、スティーブが捉えた敵兵をこちらに運んだからです。全部で10名いたそうです」
「なるほど、それでこの人数になったのか‥…」
その時、一人の兵士が叫んだ。
「辺境伯っ! ダリウス様はどうしたっ!」
「アイツか……今頃縛られて転がされているだろうよ」
エルウィンは腕組みしたままニヤリと口角を上げた。
「何っ!」
「殿下に何と言う真似を!」
「良くも……!」
途端に騒ぎ出す『カフィア』国の兵士達。
「黙れっ!! 貴様らは全員強制送還だ! ただしダリウスだけは人質として捉えておく!」
エルウィンは叫ぶとますます騒ぎは酷くなった。
『カフィア』国の兵士たちは次々に口汚く罵るが、エルウィンは相手にせずに傍らに立つ騎士に尋ねた。
「アリアドネはどこだ?」
「はい、この宿場村の教会におります。ここは危険ですので退避して頂きました」
「教会か……確か近くにあったな。では行ってくる。ついでに……」
エルウィンは騒ぎ立てている兵士たちをジロリと睨みつけた。
「こいつ等を静かにさせろ」
「はっ!」
エルウィンは騎士に命じると、そのまま宿屋を後にした――
****
一方、アリアドネは教会にある控室の中に1人暖炉の前に毛布を掛けて椅子に座っていた。
先程まではダリウスに襲われかけた恐怖と、階下で激しい戦いを繰り広げている場面を目撃したショックで震えがなかなか止まらなかった。
けれどこの部屋に案内されて、暖炉にあたることでようやく落ち着きを取り戻していたのだ。
アリアドネをここに連れて来てくれたのはスティーブだった。
激しい戦いをしている最中、どうすればよいか震えていたところをスティーブが何処からともなく現われて、教会まで連れて来てくれたのだ。
(あんなに怖い思いをしたのは生まれて初めてだわ……。騎士の人達は……エルウィン様は御無事かしら……)
「私……やっぱり迷惑な存在なのかもしれないわ……」
アリアドネは暖炉の前に手をかざしながらポツリと呟いた。
自分さえ城にいなければダリウスに攫われることもなく、アイゼンシュタットの騎士達が動くことも無かった。
元より、戦闘になることすらなかったのだ。
そこでアリアドネは救出された時から、あることを考えていた。
「決めたわ……越冬期間も終わった事だし、お城に戻れたらヨゼフさんと相談してここを出ることにしましょう。ミカエル様やウリエル様には申し訳ないけれども、これ以上城に滞在して迷惑を掛けるわけにはいかないもの」
恐らく、ヨゼフなら自分についてきてくれるに違いない。
2人でアイゼンシュタットを離れ、どこか環境の良い場所でヨゼフと2人で家族として静かに暮らしていこう……。
そこまで考えた時――
バンッ!!
突然勢いよく部屋の扉が開かれた。
「え?」
アリアドネが振り向くと、そこには息を切らしたエルウィンが立っていた。
「エルウィン様……?」
アリアドネは立ち上がった。
そんなアリアドネを見たエルウィンの顔が一瞬歪み……。
「アリアドネッ!!」
戸惑うアリアドネに駆け寄ってきた。
そして次の瞬間、アリアドネはエルウィンに強く抱きしめられていた――
するとホールには怪我を負い、ロープで縛り上げられた褐色肌の敵兵が大勢座らされていた。
そして彼らを監視するようにアイゼンシュタットの騎士達が見張っている。
『お待ちしておりました!』
騎士団長たちはエルウィンに敬礼した。
「随分人数が多いな? 初めにこの宿場村にいた人数より増えていないか?」
腕組みをし、敵兵を見下ろしながらエルウィンは傍らに立っていた騎士に尋ねた。
「はい、スティーブが捉えた敵兵をこちらに運んだからです。全部で10名いたそうです」
「なるほど、それでこの人数になったのか‥…」
その時、一人の兵士が叫んだ。
「辺境伯っ! ダリウス様はどうしたっ!」
「アイツか……今頃縛られて転がされているだろうよ」
エルウィンは腕組みしたままニヤリと口角を上げた。
「何っ!」
「殿下に何と言う真似を!」
「良くも……!」
途端に騒ぎ出す『カフィア』国の兵士達。
「黙れっ!! 貴様らは全員強制送還だ! ただしダリウスだけは人質として捉えておく!」
エルウィンは叫ぶとますます騒ぎは酷くなった。
『カフィア』国の兵士たちは次々に口汚く罵るが、エルウィンは相手にせずに傍らに立つ騎士に尋ねた。
「アリアドネはどこだ?」
「はい、この宿場村の教会におります。ここは危険ですので退避して頂きました」
「教会か……確か近くにあったな。では行ってくる。ついでに……」
エルウィンは騒ぎ立てている兵士たちをジロリと睨みつけた。
「こいつ等を静かにさせろ」
「はっ!」
エルウィンは騎士に命じると、そのまま宿屋を後にした――
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一方、アリアドネは教会にある控室の中に1人暖炉の前に毛布を掛けて椅子に座っていた。
先程まではダリウスに襲われかけた恐怖と、階下で激しい戦いを繰り広げている場面を目撃したショックで震えがなかなか止まらなかった。
けれどこの部屋に案内されて、暖炉にあたることでようやく落ち着きを取り戻していたのだ。
アリアドネをここに連れて来てくれたのはスティーブだった。
激しい戦いをしている最中、どうすればよいか震えていたところをスティーブが何処からともなく現われて、教会まで連れて来てくれたのだ。
(あんなに怖い思いをしたのは生まれて初めてだわ……。騎士の人達は……エルウィン様は御無事かしら……)
「私……やっぱり迷惑な存在なのかもしれないわ……」
アリアドネは暖炉の前に手をかざしながらポツリと呟いた。
自分さえ城にいなければダリウスに攫われることもなく、アイゼンシュタットの騎士達が動くことも無かった。
元より、戦闘になることすらなかったのだ。
そこでアリアドネは救出された時から、あることを考えていた。
「決めたわ……越冬期間も終わった事だし、お城に戻れたらヨゼフさんと相談してここを出ることにしましょう。ミカエル様やウリエル様には申し訳ないけれども、これ以上城に滞在して迷惑を掛けるわけにはいかないもの」
恐らく、ヨゼフなら自分についてきてくれるに違いない。
2人でアイゼンシュタットを離れ、どこか環境の良い場所でヨゼフと2人で家族として静かに暮らしていこう……。
そこまで考えた時――
バンッ!!
突然勢いよく部屋の扉が開かれた。
「え?」
アリアドネが振り向くと、そこには息を切らしたエルウィンが立っていた。
「エルウィン様……?」
アリアドネは立ち上がった。
そんなアリアドネを見たエルウィンの顔が一瞬歪み……。
「アリアドネッ!!」
戸惑うアリアドネに駆け寄ってきた。
そして次の瞬間、アリアドネはエルウィンに強く抱きしめられていた――



