奈落の悪役メイドは孤高の御曹司に求愛される

『は、はいっ。私ですっ』

『これは肉用! あれほど野菜用とは混ぜるなって言ったわよね!? いい加減覚えて!』

『やだ、これホコリ付いてるじゃない! ちゃんと洗ってるの!? あと箸がバラバラなんだけど!?』

『すみませんっ! ただいま新しいのと交換します……っ!』



ケアレスミスはもちろん、置き場所を間違えるなどの些細なミスにまでも怒号を飛ばされた。


残業はほぼ毎日。

試用期間が終わると担当業務以外の仕事を任されることも多くなり、遅い時は夜の10時過ぎまで残ることもあった。


今振り返ると、過酷な環境だったと思う。


最初の1ヶ月は毎日泣いていた。正直、辞めたいと思いながら出勤していた時もあった。


それでも自分で決めたことだから、契約が終わるまではやり遂げたくて。今が踏ん張り時だと、己を奮い立たせて励み続けた。


そんな矢先──事件は起きた。



『連休中の担当は弓崎さんでしたよね』

『はい』