奈落の悪役メイドは孤高の御曹司に求愛される

声を詰まらせたかと思ったら、その場でガクンとうなだれた。




「悠芽ちゃ……!」

「大丈夫? 具合悪い?」

「ごめ……っ。ちょっと、思い出しちゃって……っ」



肩を上下に揺らし、ヒックヒックと嗚咽を漏らす彼女。

まだ来て30秒も経っていないのに、つぶらで可愛らしい瞳が真っ赤に充血している。



「全部揃ってるなら良かった。じゃ」



あえて涙の理由には触れず、くるりと方向転換。1度も振り向くことなく教室を後にする。



「……嘘でしょ? 信じられないんだけど」

「普通さ、申し訳なさそうな顔しない? 誰のせいで泣いていると……」

「もはやいじめっ子というよりサイコパスだな。人類と言わず、全生物の敵だよ、敵」



しかし、ざわめきは収まるどころか激しさを増す一方。閉めたドアの向こう側から非難の声が聞こえてくる。


……悪魔の次はサイコパス、全生物の敵、ですか。

確かに傍から見たら、人の心がない無慈悲な人間だと思われるのは仕方ないけれど。



「……サイコパスはどっちだよ」