奈落の悪役メイドは孤高の御曹司に求愛される

スカウトした理由を話す入江くん。

お家とは言ったものの、正しくは母親の実家らしい。

じゃああの日一緒に歩いてたのは、母方のおじいさんってことか。



「親御さんにも、アポイントを取って、直接説明するつもり」

「クビのことは……」

「言わない。仕事量も勤務時間も、乃蒼ちゃんの負担になりすぎないよう、ちゃんと調整する」



曇りのない目。

私のことを第一に考えてくれているのかと思うと、目頭が熱くなる。



「どう、かな……?」



真剣な眼差しから一転。子犬のような眼差しで見つめられる。


たかがバイト、されどバイト。

社員の人に比べたら時間は短いが、毎日天気が違うように、作業も毎日同じとは限らない。



「返事は急がないから、家でゆっくり考えてもらって……」

「ううんっ! 私で良ければ……ぜひ、お願いしたいです」



辞めさせられたといっても、惜しい人材だったかと言われたら、正直怪しい。

ミスはほぼ毎日の頻度で。むしろ完璧にこなせていたほうが珍しいくらいだった。

経験者でも、ある程度の能力がないとそう簡単には務まらないと思っている。


だけど……こんな出来損ないを雇ってくれるところなんて、そうそうないだろうから。


不安を抱きつつも、曇りのない真っ直ぐな目を信じて、深々と頭を下げた。