奈落の悪役メイドは孤高の御曹司に求愛される

「そうだ、良かったら連絡先交換しない?」

「うんっ。いいよ」



買い物の予定を立てていたのを中断して、受話器のマークが付いたアイコンをタップ。

お互いに画面とにらめっこしながら、名前と番号、メールアドレスを入力した。



「乃蒼ってこう書くんだ。初めて知った」

「あの頃はまだひらがなで書いてたもんね」



追加したばかりの名前を、こっそり単語帳に登録する。

ほとんど名字を使うことになりそうだけど、忘れてしまわないためにも、一応ね。


アプリを閉じると、画面上部にメールの通知が表示された。

送り主は、先月面接を受けたカフェから。



「どうかした?」

「あっ……ううんっ! なんでもない」



ホームボタンを押し、画面を隠した。

笑顔を貼りつけて誤魔化した後、小さく落胆の溜め息をつく。


……また振り出しか。

終始盛り上がってたし、なんなら食いつきも良かったし。手応えあったと思ったんだけどなぁ……。



「乃蒼ちゃん」

「ん?」

「もしかしてバイト探してるの?」

「え゙゛」