奈落の悪役メイドは孤高の御曹司に求愛される

本気で根回し説の可能性を考えていたら、後ろからパタパタと走ってくる足音が聞こえてきた。



「やばくない!? あれで同級生って異次元すぎでしょ!」

「1組羨ましすぎるんだけど!」



慌ただしく私の真横を通り過ぎると、3組の教室に入っていった。

しばらくして、「キャー!」「わぁー!」と黄色い声が上がる。

マル秘情報でも仕入れたのかな。


そう思いながら2組のドアを開けたら、クラスメイトたちが一斉に私を見た。

真顔でずんずんと自分の席まで歩くけれど、やはりここも同じく。


一体全体どうしちゃったんだ……?


急変した状況に戸惑いを感じながら着席し、聞き耳を立ててみる。



「男? 女?」

「男。さっき職員室に行った時に見かけたけど、めちゃくちゃかっこよかった。綺麗な顔してて、背も高くて、モデルみたいな人だった」

「噂じゃ、先月までアメリカにいたらしいよ」

「だからこのタイミングなんだ」



……なるほど。転校生が来るのね。


男子も女子もかっこいいと口を揃えているのなら、相当な美貌の持ち主なのだろう。


異次元レベルの美形帰国子女、か。英語ペラペラなんだろうな。情報だけでも人気を集める要素が揃いまくっている。

そりゃ容姿も頭脳も平々凡々な私のことなんかどうでも良くなるよね。


腑に落ちたところで耳栓を付け、スマホで時間を潰した。