奈落の悪役メイドは孤高の御曹司に求愛される

『ひどいよっ。いくら躾だからって叩かなくても……っ』

『ちが……! あれは手をっ、自分の手を叩いてたからで……!』

『すなわち、手を鳴らして威嚇したと』

『してませんっ! 私はただ、イタズラを止めさせようとしただけで……っ。水槽から離れさせようと誘導していただけなんです! 本当なんですっ!」



必死に訴えるも、入って数ヶ月の新人を信じる者は誰1人もいなかった。


当然、契約はその場で解除された。


打ち解け合えたのが一瞬だったように、関係が崩れるのも一瞬で。


解雇されて3日後には、校内に話が広まっていた。



『主人のペットに手あげるって、どういう神経してんだろーな』

『俺も、あまりにも言うこと聞かない時は怒鳴ることあるけど……さすがに怪我させようとは思わねーなぁ』

『ひどいを通り越して人として終わってる』

『私は最初から、なんかいけ好かない感じがするなとは思ってたけどね』



教室、廊下、トイレ、中庭。

どこを歩いても、悪意を持った声と冷たい眼差しが追いかけてきて。心休まる場所はどこにもなかった。