奈落の悪役メイドは孤高の御曹司に求愛される

「ねぇ、あの子だっけ。虐待女って」



校門をくぐってわずか5秒。

ふと聞こえたヒソヒソ声に目をやると、見知らぬ女子生徒たちが蔑むような顔で私を見ていた。


彼女らの前を真顔で素通りし、昇降口へ。

教室に直行したいのを我慢して下駄箱の扉を開け、中を覗き込む。



「可愛い顔して中身は悪魔だな」



悪意を含んだ声が、また耳に届いた。



「良かったな、告白しなくって」

「命拾いした〜。危うく騙されるところだった」

「女にトラウマどころか人間不信になりそうだもんな」



声の低さからして男子だろうか。

時計を見るふりをして振り向いたら、またもや顔も名前も知らない人たちだった。


……悪魔、ねぇ。1度も関わったことないくせに何言ってんだか。

性格が悪いのは認めるけど、聞こえよがしに化け物呼ばわりするそちらも大概では?


私のほうこそ、噂を真に受けて陰口を叩くあんたたちと付き合うなんて、死んでもごめんだよ。