檻の中の恋と、奪いに来た君  〜閉じ込める愛か、奪い出す愛か〜

「名前」

不意に言われる。

「え?」

「名前聞いてねぇ」

少しだけ笑いながら言う。

「う……愛葉です」

「愛葉?」

その名前を確かめるみたいに繰り返す。

なぜか。

胸が少しだけくすぐったい。

「俺は凛月」

初めて聞く名前。

「凛月……くん」

そう呼ぶと。

彼は少しだけ目を細めた。

「じゃあな、愛葉」

そう言って手を振る。

夕日に照らされた横顔が。

どうしてか。

忘れられなかった。

そして。

この時の私はまだ知らない。

その人が。

私の世界を変える人になることを。

そして——

私を閉じ込める人になることを。