その頃。 廊下の奥。 一人の男が立っていた。 東雲蒼依。 静かに目を閉じる。 聞こえていた。 全部。 本来なら止めるべきだ。 総長へ報告するべきだ。 それなのに。 足は動かない。 蒼依は小さく息を吐いた。 そして誰にも聞こえない声で呟く。 「今回だけです」 その声は震えていた。 まるで。 二年前の自分へ言い聞かせるように。 そして。 愛葉たちの運命は少しずつ動き始めていた。